【書評】ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)(下)&DVD

 学生参加型の政治哲学の入門講義としてNHKで放映されたハーバード大学教授マイケル・サンデルによる『ハーバード白熱教室』。このブログでも東大での特別講義の件は何度かお伝えしてきましたが、今回、放送されたNHK『ハーバード白熱教室』の内容と東大特別授業の全内容が本になりました。

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)
ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上) マイケル サンデル Michael J. Sandel NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム

早川書房 2010-10-22
売り上げランキング : 112

おすすめ平均 star
starイチローの年棒は高すぎるか。社会正義の観点からこれを見る
star原書"Justice" との併読がおすすめ
star哲学へのとっかかりになる良書だと思う

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ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)
ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下) マイケル サンデル Michael J. Sandel NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム

早川書房 2010-10-22
売り上げランキング : 152

おすすめ平均 star
starこれからの・・・と比較して
star哲学入門のための良書だと思う
star日本の戦争責任を議論する(オバマ大統領は、原爆投下を謝罪すべきか)

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  講義中ならではの学生たちとのやりとりやそれを通じて展開されていく、臨場感溢れる議論を、ゆっくりたどり直すことが出来る内容になっています。この講義の内容に即したマイケル・サンデル教授の著作『これからの正義の話をしよう』、またその副読本a readerと併せてお勧めしたい内容です。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学 マイケル・サンデル Michael J. Sandel 鬼澤 忍

早川書房 2010-05-22
売り上げランキング : 13

おすすめ平均 star
star高いから買いではなかったかもしれない
star知的刺激に満ちたすばらしい本
starハワイ島

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『これからの「正義」の話をしよう』の原書↓
Justice: What's the Right Thing to Do?
Justice: What's the Right Thing to Do? Michael Sandel

Penguin 2010-02-25
売り上げランキング : 1

おすすめ平均 star
star事例とそこからの展開が面白く小気味いい
star英語学習に
starテレビを見てからの感想です。

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  副読本。講義に登場するアリストテレス、カント、ミル、ベンサム、ロールズ、ロバート・ノージック、マッキンタイアなどの著作から、重要な箇所を抜き出して紹介したアンソロジーです。↓
Justice: A Reader
Justice: A Reader Michael J. Sandel

Oxford Univ Pr (Txt) 2007-09-27
売り上げランキング : 372

おすすめ平均 star
star待っただけありました。
star中身も難易度も歯ごたえのある文章が多い
star原書のほうがいい

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また、『ハーバード白熱教室』のDVDも発売になりました。放送を見逃した方、見直したい方にはこちらもお勧めです。

NHK DVD ハーバード白熱教室 DVD BOX [DVD]
NHK DVD ハーバード白熱教室 DVD BOX [DVD]
POLYDOR(P)(D) 2010-12-08
売り上げランキング : 325

おすすめ平均 star
star商品価値はユーザー各自が決めるもの
star作品内容ではなく価格が高すぎる。
star2010年度、最高のTV番組でした!!

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おまけ
 本屋でこんなの発見しました・・・

これから「ハリー・ポッター」の話をしよう
これから「ハリー・ポッター」の話をしよう中村圭志

サンガ 2010-09-25
売り上げランキング : 131519


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 装丁・題名が
『これからの「正義」の話をしよう』に酷似していて大丈夫か?と思いましたが、内容は微に入り細に入り、「ハリー・ポッター」シリーズを分析しつくしたかなり本格的な内容です。副題に「寓意文学の哲学」とあるように、文学の理論・文学の分析哲学入門として、政治哲学以外の哲学を学ぶきっかけともなりそうな一冊です。

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D.R.ホフスタッター、D.C.デネット編 『マインズ・アイ 上―コンピュータ時代の「心」と「私」―』 阪急コミュニケーションズ 1992

マインズ・アイ―コンピュータ時代の「心」と「私」〈上〉

感想
: 『解明される意識』のデネットと、『ゲーデル・エッシャー・バッハ』のホフスタッターが編集したアンソロジーで、機能主義の立場の論者が言っていることが直感的に解る様になっています。真面目な論文も勿論ありますが、ブレインストームの為のSF傑作集として読んでも第一級の面白さです。心の哲学初心者か、或いは逆に論文等に慣れたツワモノにオススメです。

  上巻の内容は以下の通り。まあその多彩な顔ぶれを見てみて下さい。

序章 D・デネット
第1部 私とは?
第1章 ボルヘスと私 J・ボルヘス
第2章 頭がない私 D・ハーディング
第3章 心の再発見 H・モロヴィッツ
第2部 魂を求めて
第4章 計算機会と知能 A・テューリング
第5章 テューリング・テスト――喫茶店での会話 D・ホフスタッター
第6章 王女イネファベル S・レム
第7章 動物マーサの魂 T・ミーダナー
第8章 動物マーク。の魂 T・ミーダナー
第3部 ハードウェアからソフトウェアへ
第9章 精神 A・ウィーリス
第10章 利己的な遺伝子と利己的な模伝子 R・ドーキンス
第11章 前奏曲……アリのフーガ D・ホフスタッター
第12章 ある脳の物語 A・ズボフ 
第4部 心はプログラム
第13章 私はどこにいるのか? D・デネット
第14章 私はどこにいたのか? D・サンフォード

  各章には編者短評が附されています。また坂本百大氏しか表記されていませんが、他の翻訳者の方々も日本の心の哲学関係では第一人者が揃っています。

内容
: 「心」とは、「私」とは、いったい何なのか? コンピュータ・サイエンス、SF、心理学、哲学を統合し、21世紀の人間像を求めていま、読者に挑戦する。

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信原幸弘編 『シリーズ心の哲学Ⅲ―翻訳篇―』 勁草書房 2004

シリーズ心の哲学〈3〉翻訳篇この商品を楽天で見る

感想
: 現代アメリカの「心の哲学」において、「心の自然化」を目指す立場の代表論文として以下の5本が選ばれた。(1)心的状態と物的状態を「随伴的因果」とし て捉えるJ.キム、(2)何かを表現する働きをもつ「表象」を、バクテリアから人間まで進化論的に捉えるL.ミリカン、(3)クオリアと機能主義は矛盾し ないことを論じるG.ハーマン、(4)素朴心理学はいずれ脳科学に征服されて消滅すると主張するポール・チャーチランド、(5)心的表象を環境に依存する ものとして捉える「外在主義」を主張するT.バージ。

 どれも興味深いが、評者は(2)が断然面白かった。磁性を感じて酸素の少ない水へと移動するバ クテリアから、蜜蜂のダンス、尾で水面を叩いて危険を知らせるビーバー、そして人間の言語という途方もない表現力に至るまで、何か別のものを表現するとい う「表象」の機能を進化論的に統一的に理解する。何という雄大さ! 表象は、受け取る側にどのような動きをもたらすかの問題だとするところが独創 的。(5)は長大な力作だが、1~3節よりも4,5節の方が近代哲学批判なので分りやすい。心の哲学を支配する「不可謬の目」「自動的メカニズム」という 二つのメタファー(p254)を批判的に検討する視点は鋭い。(3)は見事な叙述スタイルをもつ洗練された論文。(1)も一種の随伴現象説の復活で面白 い。(4)は言葉ばかり勇ましいが内容の薄い空疎な論文。

内容: 20世紀半ば以降、英語圏において急速に発展してきた「心の哲学」の、代表的な議論をテーマごとに整理してわかりやすく紹介。第3巻は、古典となっている論文を集成。表象、意識、心と物の関係等の主要な論点に解答を与える。


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信原幸弘編 『シリーズ心の哲学Ⅱ―ロボット篇―』 勁草書房 2004

シリーズ心の哲学〈2〉ロボット篇 この商品を楽天で見る

内容
 20世紀半ば以降、英語圏において急速に発展してきた「心の哲学」の、代表的な議論をテーマごとに整理してわかりやすく紹介。第2巻は、ロボットをテーマに、心の科学の哲学的な基礎づけを目指す「認知哲学」について詳解。

感想


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信原幸弘編 『シリーズ心の哲学Ⅰ―人間篇―』 勁草書房 2004

シリーズ心の哲学〈1〉人間篇この商品を楽天で見る

感想: 本書の5つの論文は、心の哲学の主要問題(2章:志向性、3章:意識、など)を別々の筆者が一応分担する形になっています。いずれも問題の整理・展望として有益ですが、自分の立場を明確にしているのがいいです。その観点からは、1章と4章の対比が面白いでしょう。

 1章筆者はキム理論をベースに還元的物理主義を擁護する。これは、心に言及する記述表現は実は物理的状態の記述だとする存在論的主張である。心的 状態を非還元的状態と認めると心的因果が物理的因果と両立しなくなる、というのがその論拠だ。しかしこれに対する「この2つの因果説明は違う種類の実践で ある」というバージの正当な批判について、筆者は言及はしているが(P45)再反論で全く要点を外している。これは、物理的因果を真の因果概念だと考え、 心的因果を強引に同列に扱おうとした結果だと思う。

 対照的なのが4章である。この章は消去主義批判になっているが、「素朴心理学による説明と神経科学的説明とは実践の眼目が違う」という主張は的 確だ。ここで批判されているチャーチランドも、日常的な心の理解を素朴心理「学」と称して理論扱いし、神経科学と同列に扱う点が間違っている。日常的な心 の知は、行為説明が必要な場面での対応能力も含め、最も原初的な意味での「対人スキル」であり、決して理論ではない。(ちなみに文法だって、翻訳や教育の 文脈での1つの実践であって、言語スキルを支える理論として心に内在化するのは同類の誤りと思う)。それを強引に科学理論と同じ土俵に乗せた挙句、言うに 事欠いて「3000年間停滞しているダメ理論」だと?仮にダメ理論でも3000年も人間の意味を定めてきた理論ならそいつと心中しても悔いはないな。

 そういうわけで自分はたまたま1章より4章がひいきだが、これは論文の質の高低差を意味するものではありません。全体的には期待以上の内容でした。

内容: 20世紀半ば以降、英語圏において急速に発展してきた「心の哲学」の、代表的な議論をテーマごとに整理してわかりやすく紹介。第1巻は、人間をテーマに、心の哲学のおもな流れや、心的因果と物理主義などについて詳解する。



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J.R.サール 『マインド―心の哲学―』 朝日出版社 2006

マインド―心の哲学この商品を楽天で見る

感想
 本書は、心に関する主要な論点や学説を整理した上で著者自身の考えを提示する形式になっていますが、全体的には唯物論(心脳同一説・機能主義)がベースに なっていると思います。著者は唯物論について、哲学者などの専門家の間では「私たちの時代の宗教といってもいい」とまで言っていますが(p.73)著者自身も科学 に対する信頼は信仰に近いものがあります。

 この点日本では(まず常識を疑えというような)懐疑論ベースの思考が哲学では広まっているので、例えば1章での独我論の軽い扱 いや10章での素朴実在論の擁護などに対して、哲学的な?読者の不満が想像される。しかし私を含めた一般の人にとっては自然で読みやすい展開になっている と思います。

 著者は、意識を含めた心的現象は脳過程と同一であると主張し、閉じた因果的システムの中で同じ因果的機能(位置・役割)を持つことをその根拠と する。脳の物理的記述に対し、心的用語による記述は機能に即した高レベルの記述である、という関係にある。こういった主張は、基本的に唯物論と言ってい いでしょう。

 ただし、現在の主流的唯物論に対する既存の批判にも正当性があると認めるのが著者の立場です。著者によると、主流的唯物論の欠陥は、心の重要な 側面である「意識」と「志向性」、特に意識の質的性格・主観性を取りこぼしている、ということです。その原因は、物理的/心的という区別における排他的 用語法の伝統にあり、既存の唯物論はこの伝統に引きずられて意識の強引な「還元」を試み、その結果意識概念の存在意義が抜け落ちてしまう。著者の示す処方 箋は、伝統的語法を拒否し、質的・主観的性格を許容するように「物理的なもの」の概念を拡張することである(p.157)。

 私自身は、「科学」という活動や心的表現に対する見方において著者に不満はありますが、動物と人間を連続的に捉える自然主義には共感します。また、文章が良くて読んでいてとても楽しい。

内容
 よく知られている理論、しかも影響力のある理論が、そもそも全部誤っているという点で、心の哲学は、哲学のなかでも類を見ないテーマである。本書の目的の ひとつは、そうした誤った理論へ導かれてしまうやみがたい欲求から、真実を救い出すことにある。これまでにも他の著書、とくに『心の再発見』でこの課題に 取り組んできた。だが、本書こそが、心の哲学というテーマ全体への包括的な入門書の試みである(本文より)。

 「心とは何か?」人々の心を捉えて離さない最難問に、現代哲学の第一人者が挑む。

 哲学・心理学・生物学・脳科学の最前線である「心の哲学」を舞台に、従来の見解を次々に論破しながら、独自の「生物学的自然主義」を提示。心の哲学への、もっとも包括的で、もっとも新しく、もっとも明快な、魅惑のイントロダクション。

 「自 分自身が心の哲学について学ぶ際、最初に手に取りたいと思えるような本を書こうと思う」言語哲学から出発し、近年は心の哲学においても精力的な研究と 発言を続けるアメリカの哲学者ジョン・R・サール。哲学者としての円熟味を増したサールが、はじめて一般読者への入門書を書き下ろしました。

 昨今の脳ブームは「脳を解明しさえすれば人間の心も説明できる」という風潮すら感じられます。しかし、心と脳の関係とは、果たして入力信号のオンとオフのように単純なものだったのでしょうか?サールはこの問題「心脳問題」がさまざまな誤解のもとにたてられた擬似問題であることを指摘します。

 従来の心的/物質的という二元論を廃し、因果的な還元/存在論的な還元、一人称的な存在論/三人称的な存在論という区別を新たに導入した点は本書の肝と言えるでしょう。

 これにより、ミステリアスなものとして扱われがちな心を、胃の消化と同様、自然現象のひとつと捉え直し、現代の科学的知見との整合性をはかるそれがサールの提唱する「生物学的自然主義」なのです。


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瀧本 往人 『哲学で自分をつくる 19人の哲学者の方法』 哲学書千夜一夜一夜目

哲学で自分をつくる 19人の哲学者の方法この商品を楽天で見る

感想
: 帯には「哲学の歩き方―心の世界旅行にでかけよう」と江頭2:50が所属することでも有名な大川興業の大川総帥の言葉が。

 350ページで1500円というお値打ち価格もあって、つい買ってしまいました。冒頭に『哲学者相性チャート』なんてのもあって、おちゃらけた本なのだろうとさしたる期待もしてなかったのですが意外や意外、その記述たるや非常に密です。各々の哲学者に関して20ページ弱で捌いていくなんざ、あたしゃ無理よと思うのだが、そんな荒業が可能なのも、「他人とともにある私」という作者の軸がブレていないからでしょう。その語り口は、熱い。

 役立つのが各哲学者の略歴。簡潔ながらも兵歴、病歴、死因までも載っていて、繰り返し見てはその哲学者の生き様に思いを馳せる、なんて楽しみ方もできます。
本書の語りに誘われて、ジャック・デリダ『友愛のポリティックス』とスピノザス『世界・神あるいは自然』に出会うことができたのはわたしにとって何よりの収穫でした。


内容: 
ソクラテス、ニーチェ、ウィトゲンシュタインから、フーコー、ドゥルーズ、デリダまで、19人の哲学者の思想・人生のエッセンスを、現代に生きるリアルな問いに置き換え、今を生きぬいていく方法を学ぶ。

 19人の哲学者たちの思想のエッセンスを、挑発的で身に迫る問いに置き換える。もう当たりさわりのない言葉は要らない。核心を突いたリアルな問いが心に突き刺さる!
「哲学力」をきたえ、心をみがく!
「自分探し」ではなく、自分の中から「自分をつくる」ための全く新しい哲学入門。

 ビジュアルで哲学の流れ、哲学者の相関関係、それぞれの特徴がよくわかる図表を多数収録。また、コラムで意外な哲学雑学も身につく!

ティム・クレイン 『心の哲学―心を形づくるもの―』 勁草書房 2010

心の哲学―心を形づくるもの この商品を楽天で見る

原書:Elements of Mind: An Introduction to the Philosophy of Mind
Elements of Mind: An Introduction to the Philosophy of Mind

内容: 英米哲学の俊英クレインが、心の哲学の主要な論点をわかりやすく解説!物理主義と一線を画す立場から、心身問題・志向性・意識・知覚といった難題の解決に挑戦。平明かつ濃密な筆致で「心」を哲学する。

  志向性とは心が対象に向けられているということであり、心的現象の本質的な特徴である。心を科学的に位置づけようとする物理主義的還元が全盛を迎えている なか、本書では志向性という概念を通して日常的な観点と連続した形で心的現象を哲学的に明確化し、意識や知覚とはどのような心的現象なのかという心の十全 な理解への道を示す。

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