【書評】阿部幸夫 『偽装学力』(幻冬舎ルネッサンス新書001)

 「明日を豊かに生きる為に、本当の学力とは何なのか?」子供たちを変えるには、まず私たち自身が子供たちを視る眼差しを変える時がきているのかもしれません。以下目次です。

第一章 教育偽装
第二章 学力偽装
第三章 脳科学的学力観
第四章 消費者の力が偽装を見抜く
第五章 「想像力」を育てるのは家庭力
第六章 教育文化を育てる責任は産・官・学にある




 著者は、1954年に生まれ、東北大学理学部物理学科を卒業後、一旦一般企業を経て、高校教諭となり、以来25年間ユニークな理科教育を実践しながら、子供たちと向き合ってきた現職の教師である。

 そんな著者だからこそ、現在の私たちが感じている教育への不安をより一層明確に著す事が出来たのかもしれない。その不安とは、テストの点数、偏差値、学歴といったものに偏ってきた我が国の教育は本当に正しかったのかという問題に向けられている。

 特に、「良い大学に入って、良い会社に入れば、安定した収入が得られる」という将来像が、自明のものであった時代が終わったことは、昨今の就職不況、大手倒産といった現実を目の当たりにした私たちにとっては、認めざるを得ないことであろう。

 そんな中で、私たちは教育を通して、これから育っていく子供たちに何を残せるのか。本書で著者は、暗い現状を認めながらも、教育に大きな希望を示している。唯一の答えが存在しない、非常に厳しい市場社会の中へと投げ込まれる私たちの子供にとっての大きな武器は、知識を状況に応じて柔軟に応用し、新たなチャレンジを生みだす「想像力」を身につけることに他ならない。

 そしてその「想像力」を育む現場は、学校だけではなく、家庭なのである。ここでも著者は、教育をお金によって解決出来ると考えていた私たちの誤りを的確に悟らせてくれる。そして、子供たちの「想像力」を育てるもう一つの重要な要素こそ、産官学の密接な交流に基づく、実践的な教育である。

 本書で語られる著者の教育観、学力観に対して、どのような評価をするにせよ、本書は経験豊富な現場教師が見据える危機感と将来像を教えてくれるという意味で、これから子供を育てるご両親(私自身もそこに含まれるが)、教育に携わる方に是非、一度目を通していただきたい一冊である。

 その上で著者の教育観、学力観と自らの考えを比べ、これからの教育を考えてみるのは大変有意義なことだろう。なぜなら、私達自身が既に、先に述べたようなテストの点数、偏差値、学歴といった臆見、すなわち「偽装学力」に知らず知らずのうちに、毒されている可能性があるからだ。

 本書は、有名人や学問の大御所による教育観ではなく、現場の生の事実を当事者が語っているという点で、自費出版という手段を用いて、より多くの人々が語る場を提供するという目的のもとに創設された、幻冬舎ルネッサンス新書の記念すべき第一弾にふさわしい内容であった。

本書の著者による他の著作

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【書評】嶋津良智 『怒らない技術』(フォレスト2545新書)

 悪いこととは知りながら、つい表に出てしまうイライラ、本書はそんな「怒り」をコントロールする十一のテクニックを紹介した本です。

  私自身、非常に気が短く、それが原因で他人や物に向けた怒りが、人間関係や日常生活でのトラブルとなることも多く悩んでいました。この本ではそんな悩みを抱える全ての人が、明日から、簡単に始められる技術を分り易く解説しています。

  ビジネスマンとして活躍する著者自身の体験を元に書かれていることもあり、著者と同じような葛藤を経験した読者はすんなり理解出来る内容です。

  「短気は損気」という言葉の通り、日々巻き起こる「怒り」を、ほんの少し冷静に見つめて、是非「怒らない技術」を体得してみて下さい。

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柴田正良 『ロボットの心―7つの哲学物語―』 講談社学術新書 2001

ロボットの心-7つの哲学物語 (講談社現代新書)この商品を楽天で見る

内容
: ロボットも心は持てる――脳科学や哲学の最新理論をふまえつつ、機械、知性、道徳など現代人の課題に迫る思考実験。

プロローグ――本書のテーマは一言でいうと、ロボットに心がもてるか、ということである。この質問をいきなり大学生にすると、学生の大半はあまり迷いもせ ずに「No」と答える。そこで、その理由は何か、とたたみかけて尋ねると実にさまざまな答えが返ってくる。曰く、「ロボットには計算ができても、人の気持 ちは分かるはずがない」「ロボットはプログラムされたこと以外のことをする創造性をもっていない」「心とは人間の本質だ、それをロボットがもったらそれは もう人間だ、だから定義によりロボットは心をもてない、証明おわり」……
そこで彼らの言い分をひとしきり聞いた後で、「じゃ、ドラえもんには心がないわけ?」と反撃(?)すると、彼らは一様にのけぞって、「えっ、そりゃ、ずる いよ」といわんばかりの顔をする。しかし、本当のところはどうなんだろう。ロボットが心をもつというのは原理的には可能なのだろうか。これからの話を面白 くするために、私は、「可能だ」という陣営に身を投ずることにする。

感想
 これは、「心を持つロボットは作れるか?」という問いに臆面もなく(?)「作れる!」と答えている本です。と言ってもどうせ、「いかにも心を持っているか のようなロボットなら作れる」ってことだろうと思われた方――正解です。じゃあやっぱり、「ロボットにある種の生々しい感じ(クオリア)を伴った心を持た せることまでは出来ないし、実際その必要は無いだろう」とか何とか言ってお茶を濁すパターンなわけだと思われた方――残念でした、不正解です。

 著者が「心 を持つロボットは作れる」と言う時、それは紛れもなく、私たちが現に持っているような種類の心、つまりクオリア込みのそれに他ならないのです。素朴な物理 主義という考え方を採る著者の挑戦が始まる!「ロボットの心」を論じるにあたっては、もちろん「私たちの心」について考察することが必要でしょう。ですか ら本書で展開されているのは、実は歴とした「心の哲学なのです。クオリアの問題ばかりか、それと関連して著者は、今までなぜかこの分野ではあまり真剣には 論じられて来なかった「感情」の役割に関する問題にも果敢に取り組んでいます。また、7つに分けられた章の始めにそれぞれ語られる、ちょっと寓意的な ショート・ストーリーが興味をソソるんです。そんなこんなの本書は、様々な企みに満ちた画期的で楽しい「心の哲学」の本だと言って良いでしょう。


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内田樹 『街場のメディア論』  (光文社新書)

街場のメディア論 (光文社新書)
内容
: 「街場」シリーズ第4弾、待望の新刊は「メディア論」!

 おそらくあと数年のうちに、新聞やテレビという既成のメディアは深刻な危機に遭遇するで しょう。この危機的状況を生き延びることのできる人と、できない人の間にいま境界線が引かれつつあります。それはITリテラシーの有無とは本質的には関係 ありません。コミュニケーションの本質について理解しているかどうか、それが分岐点になると僕は思っています。(本文より)

 テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調----、未曽有の危機の原因はどこにあるのか?
 「贈与と返礼」の人類学的地平からメディアの社会的存在意義を探り、危機の本質を見極める。内田樹が贈る、マニュアルのない未来を生き抜くすべての人に必要な「知」のレッスン。神戸女学院大学の人気講義を書籍化。

 僕 は自分の書くものを、沈黙交易の場に「ほい」と置かれた「なんだかよくわからないもの」に類すると思っています。誰も来なければ、そのまま風雨にさらされ て砕け散ったり、どこかに吹き飛ばされてしまう。でも、誰かが気づいて「こりゃ、なんだろう」と不思議に思って手にとってくれたら、そこからコミュニケー ションが始まるチャンスがある。それがメッセージというものの本来的なありようではないかと僕は思うのです。(本文より抜粋)


感想
 読んで絶句。ものすごい感動。買って良かったと久しぶりに思えた。メディア関係者ならびに、若者にがっちり読んでもらいたいお勧めだ。もちろんこの本に関して、大いに批判を加えて良いと思う。

 この著作にも書いてあるが、読者は誰もが初めは本や活字を無料のコンテンツとして利用する。だが、その有益性に気付き、しだいに有料のコンテン ツとして利用するようになる。それが自然の流れ。だから、ネット上で読めるとか、引用されているとか、図書館利用は制限すべきとはナンセンスと言われてい るが、まさにその通りだと思う。私も実際に街場のメディア論を買う前でそのような流れをとった。私はよほどのもの意外はすべて図書館利用派である。

 特に心に残ったのはキャリア教育論や、読者をバカにした出版メディアの実情、贈与の精神の箇所。 本を読まなくなった消費者として、マスメディアがひとくくりしているのに対し、内田氏は、自らの書いた書籍が確実に売れ、活況を示していることを 例に挙げ、けっして活字文化は衰えてないし、読書のニーズは高いと主張する。問題は、読者の心に届く、知的レベルを上げる貢献をする本を、作成者がつくれ ていないこと。売れるための本を重視し、読者を消費者と、心の奥底でバカにしている点にあると鋭く付く。

 批判的な眼でみると、電子メディアと比較しての紙媒体の本の優位性の部分で、「本棚に飾れる」点を挙げていたが、これは相当な知識層の話であ り、普通の一般人にはかなり古い印象を与えるのでは。だいたい、本棚にある本に目がいくのは、その人の人柄がまだほとんど分かっていない、ファーストイン プレッションの段階だけであるから。ただ、自己満、自分の誇りを堅持するためならば、たしかに本棚は有効なのかもしれない。 ともあれ、正直、今後も何回も読み返してみたい本になると思う。


信原幸弘 『考える脳・考えない脳―心と知識の哲学―』 講談社学術新書 2000

考える脳・考えない脳―心と知識の哲学 (講談社現代新書)この商品を楽天で見る

内容
: だから哲学はおもしろい。脳と心の微妙な関係!心とは何だろうか。最新の科学が示すように脳の興奮にすぎないのか。では無意識や直観はどうなる?緻密に展開する新しい「心の哲学」の世界。

感想: 著者が意識して、新書という条件の中で、記述される内容を厳選したのであろうと感じられる。このため、話題の範囲は決して、広くはない。しかしその分、語 られる内容が非常に明確である。また、その中心的な話題も、人間の認識の様子を徹底して、物理的な基礎をもつ事象として記述するという、冒険に満ちたもの である。「こんなに簡単に説明しちゃっていんでしょうか。」、「いいんです。」という自信に満ちた、いさぎよさ。分かりやすくて、おもしろくて、ためにな る、かつ安価といった、3拍子も、4拍子も揃った良書としか思えません。


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高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)
高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)
出版社/著者からの内容紹介 大学院重点化というのは、文科省と東大法学部が知恵を出し合って練りに練った、成長後退期においてなおパイを失わん都執念を燃やす"既得権維持"のための秘策だったのである。 折しも、九〇年代半ばからの若年労働市場の縮小と重なるという運もあった。就職難で行き場を失った若者を、大学院につりあげることなどたやすいことであった。若者への逆風も、ここでは追い風として吹くこととなった。 成長後退期に入った社会が、我が身を守るために斬り捨てた若者たちを、これ幸いとすくい上げ、今度はその背中に「よっこらしょ」とおぶさったのが、大学市場を支配する者たちだった。(本文より)

内容(「BOOK」データベースより) 非常勤講師とコンビニのバイトで月収15万円。正規雇用の可能性ほぼゼロ。


博士課程後の自分をイメージする為に購入しました。 想像以上の厳しい現実と、なぜそのような状況に今の博士達が置かれているのかが大変よくわかりました。筆者は学歴ロンダリングに近い方だと思います。一流大学の方々とはまた視点が違うようにも思えます。というのは、一部の超優秀な方々は、この本に書かれている限りではないので。 誰でも博士課程に入れる時代を迎えて、自分も将来大学教授になれるような錯覚を持っている人も多いと聞きます。特に若い人は気軽に進学してきます。修了後の現実はこんなに厳しいのにそれを伝えてくれる書物は少なかったように思います。 大学教員への就職にこだわらない生き方をめざすことを、あえてきちんと入学前にイメージできていれば、アカポスにこだわり続けて自分の人生を袋小路に追い詰めていくことも少しは避けられるのではないでしょうか。院での学びを、もし大学の研究職のポストにつけない場合でも無駄にしない為に、自分の人生にどう生かしていくのかを前もって考える指針をくれる貴重な本だと思います。入学前にぜひ読んでおくべきでしょう。(amazon.co.jpレビューより)

小飼弾 『新書がベスト 』 ベスト新書

新書がベスト (ベスト新書)
新書がベスト (ベスト新書)
京都のジュンク堂書店をふらついてた時に、たまたま見つけた本だったのですが、 「10冊で思考が、100冊で生き方が変わる」、なんてサブタイトルからして、 自己啓発のたぐいのクソ本じゃないだろうな、と思ってました。 帯紙にも「新書にクソ本なし」とか書いてあって、 「こんなこと言ってるこの本がクソ本だったら大変だな(笑」」 と思いつつ手に取ってみたら、ごめんなさい、本当に人生変わりかねません。これ。 凄まじい数のフォロワーを持つブロガーだけあって、言うことにはかなりの説得力があります。 たとえば、新書はカバーじゃごまかしが利かないから中身で勝負せざるを得ない、とか、なぜハードカバーの本を買う必要がないかなど、言うことは徹底して合理的です。他の評者の方が新書とはユニクロの服のようなものかと書いておられましたが、言い得て妙だと思います。 自己啓発本であれば突っ込みながら読める自信はあったのですが、始終ツッコミを入れる余地がありませんでした。 読んでからしばらく、云い付け?に従って一か月ほど新書ばかりを読み漁っているのですが、本当に世間の見通しが良くなり始めた気がしています。地図が頭の中にインストールされたみたいです。 ある程度読書に対する基礎体力がある人には不要だと思いますが、活字メディアにこれまであまり慣れ親しんでこなかった僕のような人間には、文字通りベストでした。お勧めです。(amazon.co.jpレビューより)
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